『セレンディア』

―――私が居ると、みんなが不幸になっていくの?

「おお、神の使いよ」
おばさんは言ってた。
「神のお告げを聞きたければ、私に取り成しを求めるが良い」
おじさんは言ってた。
知らない人がいっぱい来て、身を屈め、恐る恐る触れていく。

―――ねぇ?、どうして、私を閉じ込めるの?

「素晴らしい、これこそ、私に必要な触媒だ」
怖い男の人が言ってた。
「これで、私は神に成れる」
気が狂ったような女の人の歓喜の叫びが響いてた。
鈍く輝く短剣が迫りくる。

―――嫌だよ、痛いよ、止めて、お願いっ。

お友達、いっぱいいっぱい出来た。
でも……、
知らない人たちが来て、私を知らない場所へと連れて行く。

―――会いたいよっ、又、一緒に遊びたい。

「魔王の器となりし子よ」
黒尽くめの人は囁いた。
「我らが祈願、“王”の降臨の儀式の日取りを決めよう」
暗闇にはざわめきが満ちていた。
冷ややかな闇と常に唱え続けられる重い言葉に押し潰されそうになる。

―――聞きたくない、ここに居たくない、私は望んでない。


フツ―――これが涙のかれる音?


私は、泣かないっ。
私は、泣かないっ。

ママは、私に灯火をくれた。
パパは、私に剣をくれた。

私は、泣かないっ。
私は、泣かないっ。

例え、今が悲しくても……。
例え、全てが悲しくても……。

私は、泣かない。
私は、泣かない。

今を祈る事ができるから―――。
全てを願う事が出来るから―――。

私は、泣かない。
私は―――泣かない。


FIN