バードの物語 『出会い』

12年前、とある遺跡にて―

夜明け。太陽が辺りを照らし始める頃。
今は廃墟となっている遺跡の入口を目指し、1人の青年が歩いていた。

「さーて、今日は何があるか楽しみだな!」
その青年アデルバード・クロイツェルはそう言いながら目の前の遺跡―
塔を見上げた。
かつて戦乱があった頃に建てられたものだというが、もう数百年も前に廃墟となっているため、壁はあちこち剥がれ落ち、蔦が幾重にも繁っている。
彼は今回、この塔のどこかに地下道があるとの情報を耳にし、こうしてやって来たのだった。
「ま、前にいた街で資金は稼いであるし、のんびりやるか。」
そうつぶやくと、アデルバードは塔の入口に入っていった。

数時間後のこと。
地下道を探していた彼は、奇妙な声を耳にした。
最初は風穴から洩れてくる音がなにかかと思い、無視していたのだが―
(。。。なんだ? 音、じゃなくて、これは。。。泣き声、か?)
時間がたつにつれて、それは大きくなっているような気がする。
どうやら上のほうから聞こえてくるようだ。
「しょうがないな。」
そう呟きつつ、彼は階段を登っていった。

塔のてっぺんに登った途端、アデルバードは不思議な光景を目にした。

炎の色と土の色の風が、辺り一面を舞っている。

(。。。なんだありゃ?)
目をこすってもう一度見てみたが、やはり幻覚ではないようだ。
彼が思わずその風に近寄ろうとすると、一瞬にしてその風は消え去った。
後に残されたのは―

「! 赤ん坊、か? なんでこんなところに。」
産着に包まれ、スヤスヤと眠っている赤ん坊の姿があった。
先ほどの泣き声は、この赤子のものだったらしい。
その側には、杖、いや古い棒杖が置かれていた。
先端には赤と黄色の宝石がはめこまれており、何か古代文字のようなものが刻まれている。
 アデルバードは少しの間思案していたが、ポリポリと頭を掻くと、杖を背中に背負い、赤ん坊を抱き上げた。
「こりゃ、今日は帰らないとな。ま、こんな珍しいものが手に入ったから、良しとするか。」
そう呟くと、彼は遺跡の近くにある街へと引き返していった。